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逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
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モシモノ場合、モシモ、モシ、ソレガ本当ナラ★竹内浩三 筑波日記

「五月のように」さんより転載させていただきます。
http://www.h4.dion.ne.jp/~msetuko/tkozo/takeutisakuhin.html

なお、竹内浩三著 小林察編 「日本が見えない」(藤原書店)より
筑波日記 全文と写真版を参照させていただいています。

http://www.fujiwara-shoten.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=510&cPath=177_222

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1944年 昭和19年
2月11日

 けふの佳き日は、紀元節。
 寒い風がふいているのに、みんな、飛行場へ。式に、ならんでいる。
 がらんとした事務室で、ストーブをがんがんたいて、「光」をスパスパやらかしている。

 営外者だけが買える「光」を、その物品販売所へもってゆく通報の二個を三個と書きなおして、
買ったものである。この手を用いると、タバコの不自由はない。

 この週の中に、3年兵は満期すると云うデマがとんだ。
ここでは、火のないところから、よく、烟が はでにあがるから、
これも、あてにはできないけれども、もしもの場合、もしも、もし、それが本当なら、めでたい。

 ストーヴのふたをあけて、その前へしゃがんで、
タバコをすいながら、火をじっと見ているのが、すきだ。

 式がすむと、風呂が立った。
 まんじゅとようかんと、酒とするめとかずのこが上がった。
 みんな外出してしまって、事務室は閑散となった。
ひるめしを食べてから風呂へ行った。ひさしぶりで石鹸を使ったりなどした。

 帰ってくると、二班で居残り連が酒を飲んでさわいでいた。その中へよびこまれて、調子づいて、がぶがぶ飲んで、事務室へ来て、ストーブにあたったら、たちまち、まわってきた。ねむとうなって、六尺イスの上に横になったら、うとうと眠ってしまった。「あきれたやつや」そんなことを誰か云っていたようであった。

 ぞくぞく寒気がしてきた。16時であった。ストーブにあたっていても、体がふるえた。お湯をなんばいも、のんだ。するめをやいたり、餅をやいたり、食べてばかりいた。
 
夕食は、サメのおかずで大してうまくないけれども、どっさり食べた。サメのおかずがよくつく。魚の中で、サメほどまずいものはない。
 
 金魚ト眼鏡ト風琴ト
 椎ノ実
 コトバガ コトバガネェ
 眼鏡ノ
 森ノ
 コトバガネェ
 ボクノ口カラ 出テコナイ

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紀元節で、一日お休み。
よく食べて、風呂に入って、お酒ものんで・・・

でも、やりきれない浩三の気持ちが、詩になった。


紀元節 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%80%E5%85%83%E7%AF%80
神武天皇の即位日、明治6年に、2月11日と制定した。
1967年に、「建国記念日」として復活。
by anzu-ruyori | 2012-02-11 16:21 | 浩三さん(竹内浩三)