逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

息がつまりそうである。★竹内浩三★筑波日記

昭和19年

6月16日 【金曜日】

 きのうから演習に出ている連中が、夜を徹してあるいて帰ってきた。

 衛兵であった。再び空襲警報がかかった。
それと同時に、大きな地震がきた。土の上に立っていても、からだが揺れた。地面が歪んだようであった。空襲となんかカンケイがありそうな錯覚をあたえたが、なんのカンケイもないものであった。
 
 夜になってはなはだしい眠さがきた。弾薬庫に歩哨していて、ゴロリと横になって寝ていた。これが見つかれば、ただではすまぬ罪になる。営巣だけでは、すまされない。寝ていた。

 あとで、このことを人に云ったら、誰も本当にしない。
すくなくても二年以上のチョウエキであろう。

6月17日 【土曜日】

 衛兵を下番してきて寝た。ひるめしを喰って、また寝た。

 ちかごろ、きげんがわるい。一分間もしていたくない生活である。
息がつまりそうである。こんな生活が、あと何年つづくのか。

 中井からはがきがきた。南九州の明るい海岸町にいて、明るい文章を書いている。

6月18日 【日曜日】

 朝おきると、銃剣術で、めしがすんで、またであった。
 ひるから、松林の中で、兵器の学課であった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2年のチョウエキ・・・。本当にチョウエキになっていたらよかったのに。

「一分間もしていたくない生活である。
息がつまりそうである。こんな生活が、あと何年つづくのか。」
この日記が、見つかっただけでも、たいへんな懲罰があっただろう。
[PR]
by anzu-ruyori | 2012-06-16 23:20 | 浩三さん(竹内浩三)