逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
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モウ、春ラシイナッテキタナア★竹内浩三 筑波日記

3月17日 【金曜日】

 明けがた、小便をしに起きると、となりの佐藤伊作君も起きていて、
床にはいると、「もう、春らしいなってきたなぁ」と云った。

 九州で使う落下傘を、汽車につむ使役で、トラックに落下傘と一緒に乗って北条まで行った。
駅に着くと、もう先に梱包積み込みの使役の連中が、つみこんだり、貨車押しをやったりしていた。それと一緒にひるまで、やっていた。帰りは歩いて帰った。

 梅が咲いていた。
 その梅の枝に、鶯のかごがかけてあった。
 お寺のように大きい、わらぶきの家で、
 おじさんがお茶をのみながら、
 梅を見ていた。

 今度の三班は、うるさい古兵がいないので、気がのどかでよい。
 それに近頃、あんまり鳴らないけれども、ラジオに近くなったのも、よい。

 ふと気がついたら、メンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルトを鳴らしていた。
ラジオの真下へ行って、口をぽかんと開けて、聴きこんだ。
風呂から上って、カルピスを飲んだように、その甘い音が、体へここちよくしみこんだ。

 白ペンキがあったので、酒保で買ったたばこ入れに、魚の模様をかいた。
しゃれたものができて、気に入った。

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はがき小説  鳥ト話ヲスル老人 は、このとき思いついたのであろうか?


筑波山麓ニ、小鳥ト話ヲスル老人ガイルト言ウノデ、
休ミノ日ニ、会イニ行ッタ。西洋ニエライ坊サンガイテ、
ソノ人モ鳥ト話ヲシタソウダガ、コノ老人モ又ソンナフシギヲヤルノカト
思ッテ見テイルト、話シダシタ。ヒバリノヨウナ小鳥デ、ピイチクピイト言ウト、
老人ハ口ヲスボメテ、パアチクパアト言ッテ、ドウデスコノトオリト、ボクニジマンソウニシ、
又パアチクパアパア言ッタ。一体ソレハ人間ノコトバニスルトドウ言ウ意味カ、ソレヲ教エテ
モラワンコトニハカンシンモデキヌデハナイカト言ウト、西洋ノコトバヲ日本語ニ訳スルノトコノコトヲ同ジヤウニ考エルトハ、小鳥ニ長グツヲはかせるようなバカゲタコトデスワイト、笑ッテイルタ。



竹内浩三「筑波日記」は、

「五月のように」さんより転載させていただきます。
http://www.h4.dion.ne.jp/~msetuko/tkozo/takeutisakuhin.html

なお、竹内浩三著 小林察編 「日本が見えない」(藤原書店)より
筑波日記 全文と写真版を参照させていただいています。

http://www.fujiwara-shoten.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=510&cPath=177_222
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by anzu-ruyori | 2012-03-19 22:53 | 浩三さん(竹内浩三)