逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
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暖イ一隅 ★竹内浩三 筑波日記

3月18日

 この頃、ひまな時間がわりにある。だから、日記も長いのが書ける。
 朝、印かん入れを革でつくった。

 ひる、木村班長が、操縦士見習士官を受けるものはいないかと云いにきた。
40分ほど考えていてから、受けますと云いに行った。どうして受ける気になったと、
奥谷が云った。「ちょっといばってみたくなった」すると「その気持ちはようわかる」と云った。
涙の出るような気がした。

 宇野曹長が、ぼくの服のきたないのをとがめて、いつから洗濯しないのかと云った。
ほんとは、ここへ来てから、一度もやっていないのだけれど、正月やったきりですとうそを云うと、それでもあきれていた。さっそくせいと云うので、雨がじゃんじゃん降っていたけれども、白い作業着に着かえて、洗濯をした。

 ロシヤの小説をよむとよく、温い一隅と云うことばが出てくる。
たとえば、チェホフの「殻の中の男」にも「自らを嘲り、自分自身に嘘をつく_こうしたことも、一辺のパンのため、暖い一隅のためなのですからね」

 この手帳は、ぼくの「暖い一隅」とも云える。

 風呂のぬるいこと、またかくべつであった。つかっていてもふるえた。
外に出たら、雪になっていた。

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竹内浩三「筑波日記」は、

「五月のように」さんより転載させていただきます。
http://www.h4.dion.ne.jp/~msetuko/tkozo/takeutisakuhin.html

なお、竹内浩三著 小林察編 「日本が見えない」(藤原書店)より
筑波日記 全文と写真版を参照させていただいています。

http://www.fujiwara-shoten.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=510&cPath=177_222
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by anzu-ruyori | 2012-03-19 23:00 | 浩三さん(竹内浩三)