逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

雫ガ夕立ノヤウニオチタ★竹内浩三 筑波日記

3月19日 【日曜日】

 雪がつもっていた。
右廊下に干しておいた衣袴が、まっ白に雪をかぶって、ぱりんぱりんに凍っていた。
 けれども、雲一つない、いい天気になった。

 雪が、びしょびしょととけはじめた。雪どけの水が、地面を音をたててながれた。
屋根からは、雨のように水がながれおちた。木々からは、雫が夕立のようにおちた。
そして、地面からも、自動車からも、どぶ板からも、湯気がたちのぼった。

 一日、なんにもせずにくらした。
 夕方になると、曇ってきた。

3月20日 【月曜日】

 五時に全員起きた。
 中隊の大部分が、きょう、九州へ立つ日である。
 七時。雪のひひと降るなかを、元気よくと云うほどでもなく、
 元気なくでもなく、中ぐらいの元気さで出かけて行った。

 「鬼のおるすに洗濯」と云うような気分になるなと、週番士官によってとどめを刺された。

 雪が雨になった。ビショビショとよく降った。なんにもすることがない。

班内ですこしばかり銃剣術をさせられた。気合の入らないこと、はなはだし。

 ひるから、外套など着こんで、のんびりとやっていると、志村少尉が怒った。でたらめだと云う。

そして戦陣訓の学科となった。
朝日新聞から出ている『山崎軍神部隊』と云う本を読んで聞かせてくれた。
その文の、映画的なのにおどろいた。

 あしたの春季皇霊祭は、外出できる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「山崎軍神部隊」は、1943年アッツ島玉砕の軍記小説。


竹内浩三「筑波日記」は、

「五月のように」さんより転載させていただきます。
http://www.h4.dion.ne.jp/~msetuko/tkozo/takeutisakuhin.html

なお、竹内浩三著 小林察編 「日本が見えない」(藤原書店)より
筑波日記 全文と写真版を参照させていただいています。

http://www.fujiwara-shoten.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=510&cPath=177_222
[PR]
by anzu-ruyori | 2012-03-19 23:16 | 浩三さん(竹内浩三)