逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
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チャイコフスキーの第六シンホニイ★竹内浩三★筑波日記

3月28日 【火曜日】

 雨がふっている。
 戦陣訓の試験があった。
 『乗越し』を読んだ。沢田と云う人はどう云う人なのか知らないが、
この本はなかなか面白い。ちかごろ読んだ本の中で一番おもしろい。

 一日、雨がふっていた。

3月29日 【水曜日】

 きょうは、休み。雨もやんだ。
 みんな外出に出かけた。ぼくは居のこり。
 みんなが出ていくと、すぐに寝床に入った。
まくらもとに、すいがらを入れて置いて、ラジオの子供の歌を聴いていたら、
いつのまにやらねむっていた。

 ひるめしを、はら一ぱい喰って、また寝た。
 亀山が来て、たばこをやろうかと云う。又、手紙を書いてくれと云うのであろうと思っていると、そうであった。
「ぼくが入隊前に植えたさくらの樹に、花がさいたら知らせて下さい」と云う文句であった。

 14時ころ、風呂がわいたと云う知らせがあった。
 ゆくと、木俣老人がのんびりとつかっていた。

 窓のところを、低い飛行機がものすごい音を立ててすぎた。
 また、寝た。

 山口に借りた林芙美子の『田園日記』を読もうとしていると、木俣老人が来た。
 フランスへ行きたい話などした。

夜になると、ラジオがチャイコフスキーの「第六シンホニイ」をならした。
からだがぞくぞくしてきた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

雨のあとの休日。居残りで寝てばかりいる浩三。

「第六シンホニイ」は、入隊の日、出発ぎりぎりまで
膝をかかえて聞いていた曲。
 見送りのたくさんの人が待っているから、急いでという姉に、
浩三さんはこういった。
「姉さん、もうこんな音楽はこれからは絶対に聴けないんやで。
もう少しだけ、たのむから最終楽章まで聴かせてくれよ。」

第六シンフォニーの副題は「悲愴」
浩三さんがきいていたのは、ベルリンフィル フルトベングラー指揮のものだろうか。

亀山さんは、1月8日の日記で「亀山はナカナカ、アホである」「カシコイやつより
何倍かヨイ」と書かれた愛すべき戦友。
木俣老人は、31歳の医学士。


竹内浩三「筑波日記」は、
「五月のように」さんより転載させていただきます。
http://www.h4.dion.ne.jp/~msetuko/tkozo/takeutisakuhin.html

なお、竹内浩三著 小林察編 「日本が見えない」(藤原書店)より
筑波日記 全文と写真版を参照させていただいています。

http://www.fujiwara-shoten.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=510&cPath=177_222
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by anzu-ruyori | 2012-04-08 20:24 | 浩三さん(竹内浩三)