逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
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なにをたくらんでいるのであらうか★竹内浩三★筑波日記

昭和19年
4月26日 【水曜日】

 一時間、起床延きであった。
 作業衣を着て、かけあしと称して散歩であった。
 田で蛙が鳴いていた。小学校には桜であった。

 飛行場の裏の松林へ来てびっくりした。兵舎のような建物が、
しらぬまに、しかもものすごい数で、新築されていた。
ただごとではない。一体なにをたくらんでいるのであろうか。

 ひるから、中村班長と、昨夜おとした薬きょうをさがしに行った。
すぐ見つかったので、昼寝をした。
二十九日から外泊があるけれども、ぼくは、一度帰ったからもう帰れない。

 あれも書こう、これも書こうと考えている。
この手帳を、さて、あけてみると、なにも書けなくなる。
まるで恋人の前へ出たように、うまいことばが出て来ない。

 雨曇り  故里はいま 花ざかり

4月27日 【木曜日】

 ばかばかしいほどよい天気であった。
 裸になって角力をしたが、負けてばかりいた。
 ひるからは、大隊の角力の競技会であった。
ぼくは応援団長で、旗をふっていた。うちの中隊はビリであった。

 たえず、ためいきをしている。

 気ちがいに、よくも、ならないものだ。

 故里にむかいて走る五月雲、これは近藤勇の句だと、ぼくは思いこんでいる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ただごとではない。何をたくらんでいるのだろうか」

「たえず、ためいきをしている。 気ちがいに、よくも、ならないものだ。」

このように思い、書くことだけで、「非国民」といわれた時代だろうに。


竹内浩三「筑波日記」は、
「五月のように」さんより転載させていただきます。
http://www.h4.dion.ne.jp/~msetuko/tkozo/takeutisakuhin.html

なお、竹内浩三著 小林察編 「日本が見えない」(藤原書店)より
筑波日記 全文と写真版を参照させていただいています。

http://www.fujiwara-shoten.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=510&cPath=177_222
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by anzu-ruyori | 2012-04-28 09:00 | 浩三さん(竹内浩三)