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逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
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もう、そこらみどり葉で★竹内浩三★筑波日記

昭和19年

5月4日 【木曜日】

 はつなつがきた、とぼくの皮膚がおもった。
 石鹸水の雨が降って、その次に、きれいな水がふって、
かっとお日さんが照ったら、ぼくのきものはきれいになるが。

 営外者がぞろぞろかえってゆくと、今日もどうやら終った。
夕飯をたべて、一ぷくやって、飛行場の果ての夕焼をみた。

 電気がついて、遮光幕をおろして、点呼とって、ねむうなって、
はやくねさしてくれんかと考えながら、あとかたづけをして、
どなたさまもおやすみなされと、二十二時半。

 信平よ、と、暑がって脱ぎだしてねている宮城島にものを云うたかと思うと、
もう不寝番がおこしにくる。
窓あけて、そうじして、茶をわかす。
一日、マッチのようにつかわれて……と、くりかえし、くりかえし、
どこで、花実が咲こうぞえ。

はるがきて、はながさき、わかばみどりになりながら、ぼくには花がない。


5月5日 【金曜日】

  もう そこら
  みどり葉で
  ぼくは
  がらがらと
  矢車をならし
  へんぽんと
  いさましい
  鯉のぼり
  かかげた
  筑波山の山ろくで
  ぼくの
  ことしの せっく

5月6日 【木曜日】

 ぼくに、デンポウがきた。ヤスブミシス、メンカイヨキヒ、ヘンヲ、オカヤス

 それは意外なことであった。おもいもかけなかった。あわよくば、帰してもらわんと、うまいこと云ったがだめであった。しかしまた、ヤスブミさんの死が、ぼくに面会を必要とするのは合点がゆかぬ。

 大岩保、いね子からハガキがきた。ひじょうにうれしかった。


5月7日 【金曜日】

 中井利亮のおやじさんと、それからめずらしく、鈴木珠太郎とからハガキがきた。

 夜、週番の橋本准尉と将棋をしてまけた。おべっかつかって、わざとまけているとおもわれてはかなわぬ。まけてはなるまいとあせったら、二度めもまたまけた。

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ヤスブミさんは、岡安のおばさんの息子さんか?

みどり葉の五月。

6日に、竜巻発生して、被害のあったつくば市北条と吉沼の間に
浩三さんたちの陸軍飛行場があったようです。
by anzu-ruyori | 2012-05-08 12:03 | 浩三さん(竹内浩三)