みどり葉の五月 ぼくの誕生日★竹内浩三★筑波日記
2012年 05月 12日
昭和19年
5月12日 【金曜日】
みどり葉の五月。ぼくのたん生日である。
外出した。麦が穂を出していた。十一屋に大岩照世夫妻がきていた。宗道まであるいた。
みどり葉の五月。
面会にきてくれると、
ぼくは、もっと、もっと
ものを云いたいと、あせりながら、
ものがあまり云えなくなる。
いつもそうだ。どうでもいいようなことに、ことばをついやしてしまう。
かすれた接触面をもつ。
赤いうまいリンゴであった。
下妻でミルクを飲んだ。カツとテキをたべた。スシをたべた。
街をあるきまわっていた。
クローバの草原の上でやすんだ。
もっとものを云いたいとおもっているうちに、時間がすぎた。
酒をのんだ。
みどり葉の五月。むぎばたけの中を帰った。
『春をまちつつ』と『種の起源』と『日本書紀』をもってきてくれた。
夜、すこし読んだ。
夜、銃剣術をした。
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竹内浩三 23歳の誕生日 つくばにて。
5月12日 【金曜日】
みどり葉の五月。ぼくのたん生日である。
外出した。麦が穂を出していた。十一屋に大岩照世夫妻がきていた。宗道まであるいた。
みどり葉の五月。
面会にきてくれると、
ぼくは、もっと、もっと
ものを云いたいと、あせりながら、
ものがあまり云えなくなる。
いつもそうだ。どうでもいいようなことに、ことばをついやしてしまう。
かすれた接触面をもつ。
赤いうまいリンゴであった。
下妻でミルクを飲んだ。カツとテキをたべた。スシをたべた。
街をあるきまわっていた。
クローバの草原の上でやすんだ。
もっとものを云いたいとおもっているうちに、時間がすぎた。
酒をのんだ。
みどり葉の五月。むぎばたけの中を帰った。
『春をまちつつ』と『種の起源』と『日本書紀』をもってきてくれた。
夜、すこし読んだ。
夜、銃剣術をした。
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竹内浩三 23歳の誕生日 つくばにて。
by anzu-ruyori
| 2012-05-12 01:00
| 浩三さん(竹内浩三)