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逡巡のとりどり@京都


by anzu-ruyori
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寝小便たれの四年兵がいなくなったので、そのソウサクであった。★竹内浩三★筑波日記

6月9日 【金曜日】

 廠営も終って、きょうはかえる。汽車の中で、はなはだしく、胃が痛んできた。
 高橋班長にかりて、『結婚の責任』と云う小説を読んだ。題名からして下らない二文字小説かと思っていた。そしたら、おもしろい。おれにはとてもこれだけのものは書けない。

 胃の痛みは、ますますはげしくなってきた。北条でおりて、しんぼうしながら、あるいた。夕食はぬいた。
 木村班長に云って、早く寝ることにした。こんなふうにして、病気で寝たのは、はじめてのことであった。

6月10日 【土曜日】

 兵器とヒフクの手入れと、午後はそのケンサであった。

6月11日 【日曜日】

 木村という寝小便たれの四年兵がいなくなったので、そのソウサクであった。
各班ごとに、各所に別れて探した。ぼくの三班は北条方面であった。クモをつかむようなはなしだと思って、ぶらぶらあるいていた。
すると女の子が自転車できて、それがいたと云った。これは、おもしろいことになったと、山をかけ、野を走った。にげる方では、面白いどころではあるまい。

岡野上等兵がつかまえた。木村はハナをたらして、おびえていた。

夜の点呼のときに、木村班長が特別幹部候補生を受けるものはないかと云った。
ぼくは受けると云った。
 こないだ臨外をしたから、あしたの外出は残れと云うので、残ることにした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「結婚の責任」
市橋一宏、 淡海堂出版部、 S17

か? 

また、脱走者が出た。木村さんはふるさとに帰りたかったのだろうか。
訓練がきびしかったのだろうか。
「寝小便たれ」とは知的しょうがいのある人だったのかもしれない。
しょうがいのある人にとっての軍隊生活は、いっそう過酷なものだったときいたことがある。

特別幹部候補生
・・・特幹 
以下、ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E8%BB%8D%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%B9%B9%E9%83%A8%E5%80%99%E8%A3%9C%E7%94%9F
by anzu-ruyori | 2012-06-09 23:44 | 浩三さん(竹内浩三)